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ウェルトゥムヌス
2008
花(シネラリア)、水、カラーラ大理石、木
120x110x15cm
photography by Kei Okano
Courtesy Tomio Koyama Gallery, Tokyo
カラーラ産の大理石、花と水による彫刻作品。大理石の表面がおよそ20mmほど擂り鉢状に削られており、そこに水が満たされている。水面には生花が浮いており、展示空間の空気の動きに連動して、水も生花も動く。生花は水がなければ生きられず、水は大理石がなければそこに存在することが出来ない。この関係性を知覚できなければ、大理石はただの器にすぎない。作品は、可動性をはらみ緊張感を持ちながら存在し、緩やかでしなやかな関係を感じさせる。
花が時間の経過とともに変化する状況を作りだし、花と水が展示会場の空気の流れによって揺れ動く。状況はつねに不安定であり、時間の経過とともに、花の姿は形を変えて行く。その変化を知覚するとき、美は人の記憶に生き続ける続けるのであり、自然の美しさを保つための人工的な努力が無駄であると我々は気づく。空気の流動性をとおして、通常目には見えない状況を作りだしていることに成功している。
ウェルトゥムヌスとは、ローマ神話に登場する果物を生らす樹木の守護神。エトルリア人の四季の移り変わりを司る神で、果実を熟させる力を持つ。